2013年

8月

26日

〈BD〉全日本レディース3Cのちょっと裏側

ファイナルのバンキング。手前:林プロ、奥:肥田プロ
ファイナルのバンキング。手前:林プロ、奥:肥田プロ

 


「誰かに憧れる」ことで強くなれる人がいる。

 

 

 

表彰式で目に涙をためていたあの人もそうでした。

 

 

 

…………

 

 

 

『全日本レディーススリークッション選手権』の

 

取材で、東京・野方『Kobby's Billiards』へ。

 

 

 

結果は、「女王」肥田緒里恵プロ(JPBF)の

 

13度目の優勝。

 

 

 

ファイナルの相手は、

 

今まで3位が最高の林奈美子プロ(JPBF)。

 

 

 

前半は完全に林プロのペースでした。

 

 

 

眉一つ動かさず落ち着き払って撞く姿に惚れました。

 

 

 

しかし、ゲーム後半。

 

 

 

百戦錬磨の肥田緒里恵の強さというものを

 

僕らはきっちり見ることになりました。

 

 

 

「当たった」じゃなく「当てた」。

 

 

 

そういう球でした。

 

 

 

「世界の女王」と呼ばれる人がそこにいました。

 

 

 

思えばこの林vs肥田というカードは、

 

 

 

昨年の『世界選手権』in東京の

 

予選リーグ一発目の試合でした。

 

 

 

あの時は林プロが下馬評を覆して勝っています。

 

 

 

肥田プロも当然そのことは頭にあり、

 

集中を高める触媒にしたのではないかと思います。

 

 

 

その圧に押された訳ではないでしょうけど、

 

 

 

林プロは中盤以降当たりが止まり、敗れました。

 

 

 

表彰式、

 

林プロの目には光るものがありました。

 

 

 

しかし。

 

 

 

林プロが明らかに一段上のステージに来たことが

 

わかるファイナルでした。

 

 

 

「あの世界選手権で

 

オリエさんに勝てたことは大きな自信になりました。

 

 

 

オリエさんは一番の憧れの人なんですよ。

 

 

 

自分より上手いということは

 

はっきりわかっているんです。

 

 

 

でも、今日は……今日は勝ちたかったなぁ……」

 

 

 

林プロは打ち上げの席でしみじみと語りました。

 

 

 

…………

 

 

 

その直後のこと。

 

 

 

宴席の離れた卓にいた肥田プロが

 

近くの席に移ってきました。

 

 

 

チャンピオン自ら、参席の皆さんにお酌です

 

(恐縮です)。

 

 

 

すかさず、唯一のアマ選手、

 

小林諒子さんが肥田プロに尋ねます。

 

 

 

「試合中、オリエさんは自分の

 

水筒を持っていたじゃないですか。

 

 

 

あの中身はなんなんですか?」(小)

 

 

 

「えぇー!? ただのコーヒーとお茶だよ(笑)

 

(※水筒は2つあった)」(肥)

 

 

 

何かと質問攻めに合うチャンピオンです。

 

 

 

僕も試合展開とかメンタル面について、

 

ちょこちょこ肥田プロに質問をしたのですが、

 

 

 

それに対する肥田プロの回答を

 

 

 

林プロ小林選手も、コクコク頷きながら

 

一つ一つ熱心に聞いています。

 

 

 

どんなことにも強くなるヒントが

 

あるに違いないという眼差しです。

 

 

 

その光景を見て、

 

そうか! と気付きました。

 

 

 

僕は肥田プロのことを

 

キャロムビリヤードのいちプロ選手

 

(とんでもなく偉大ですが)、

 

 

 

あるいは仕事のお相手として見ていて、

 

 

 

そこに特別な憧憬もなく、

 

過度に構えることもないのですが、

 

 

 

(同い年だし、性別が違うということも

 

あるでしょうか)

 

 

 

スリークッションをしている女子選手で

 

肥田プロを意識しない選手などいないでしょう。

 

 

 

憧れ、敬意、畏怖、緊張。

 

 

 

それから、模倣、分析、傾倒、吸収……

 

 

 

あらゆる感情と行動の的になる人なのです。

 

 

 

それも世界レベルで。

 

 

 

(これに近い人を僕は

 

 

 

別のビリヤード競技で何年も見ています。

 

 

 

日本女子のポケットビリヤード界です。

 

 

 

そう、梶谷景美プロです)

 

 

 

そしてまた、

 

肥田プロ本人はこう言うのです。

 

 

 

「年々試合が面白くなっているんですよ。

 

 

 

皆がどんどん強くなってきているから」

 

 

 

自分の存在が周りを照らし、

 

発育を促しているということにとても無頓着……

 

 

 

というか、「認められたい願望」や

 

「影響力自慢」が全くありません。

 

 

 

(有り体に言えば商売っ気がなく、

 

でも、そのことによってフォロワーが増えています)

 

 

 

この人柄こそが、

 

「世界一の女子3C王国・日本」を作った、

 

一つの大きな要素なのかもしれません。

 

 

 

そう。

 

 

 肥田緒里恵という人はみんなの太陽なのです。

 

左:小林諒子選手 右:肥田緒里恵プロ
左:小林諒子選手 右:肥田緒里恵プロ